昨日エディオンスタジアム広島に今季最多の22,333人を集めて行われたJ1リーグ第33節FC東京戦は、柴崎と稲垣のゴールで2-1で勝ってJ1残留を決めました。
先発メンバーは前節神戸戦と同じ。またベンチに久々に森崎和を入れて、以下の布陣で戦いました。
林
椋原 千葉 水本 高橋
青山 稲垣
柴崎(→森崎和83分)
柏 フェリペ
(→茶島86分)
A・ロペス
SUB:廣永、野上、丹羽、パトリック、皆川
対するFC東京は、GK:大久保択、DF:山田、吉本(→ユ・インス77分)、丸山、MF:橋本、東(→梶山86分)、室屋、太田、FW:高萩、永井(→久保67分)、前田、と言うメンバーでした。立ち上がりはロングボールを蹴ってしまうシーンが目立ちましたが、何度か相手のパスミスを奪ってチャンスを作ると徐々に落ち着きを取り戻して流れるようなサッカーを展開します。5分にはアンデルソン・ロペスが丸山に付かれながらも反転してシュートしましたが枠外。14分には青山がミドルで狙いましたがDFにブロックされます。19分にはフェリペ・シウバの横パスを青山がフリーで打ちましたが惜しくも枠外。24分にはプレスをかわしてGKから繋ぎ、フェリペ・シウバのドリブルで攻め込んだもののラストパスが乱れてシュートを打てません。逆に9分には高い位置で奪われ橋本にミドルを打たれましたが上に大きく外れ、11分には永井にDFの間を抜かれて永井にシュートを打たれましたが枠外。28分には永井の飛び出しを林が飛び出して防ぎ、直後に橋本にフリーで打たれましたが大きく上に外れて助かります。前半の後半は全員が自陣に引いて守りを固める東京に対し、広島が軽快なパス交換からチャンスを作り36分にはアンデルソン・ロペスがバイタルから狙いましたが枠外に外れます。そして前半44分、右からカットインしたフェリペ・シウバが左足でシュートを放つと柴崎が軌道を変えてゴール。広島は良い時間に先制点を奪って1点リードで前半を折り返すことになりました。
後半立ち上がりはやや東京に攻め込まれたもののその後は広島ペースで追加点を奪いに行き、9分には中央での連携から突破を図り、その直後のCKをアンデルソン・ロペスが頭で狙いましたが惜しくも枠外。後半12分には高い位置で相手ボールを奪うと柴崎が思いきって打ちましたが枠外に外れます。しかし後半13分、太田の精度の高いCKから山田将之に頭でJ1初ゴールを決められ、同点に追いつかれてしまいました。
ゲームを支配しながら同点に追いつかれてしまった広島ですが、しかしこれで気持ちをダウンすることなく落ち着いてパスを回して攻めを構築します。そして後半20分、左サイドでボールを持ったフェリペ・シウバがDFを引きつけて稲垣へパス。稲垣はこれをワントラップして冷静にコースを狙ってシュートを沈めて、再び勝ち越しに成功しました。
東京はその直後に久保を投入して追撃の体制を整えます。そして22分には前田に決定的なシーンを作られましたが林が素晴らしいセーブを見せます。25分には柴崎のパスを受けたアンデルソン・ロペスがペナルティエリア内で反転シュートを放ちましたが惜しくも枠外。30分には高橋とのコンビネーションから柏のクロスにアンデルソン・ロペスがヘディングで狙いましたが枠を捉えることができません。続いて31分にもアンデルソン・ロペスの守備から流れるようにパスを繋いで青山がシュートしましたがDFがブロックされ、32分にはフェリペ・シウバがドリブルからシュートしましたがGKの胸に収まります。逆に33分にはユ・インスのヘッドのこぼれを前田に狙われましたがバーの上で助かります。何とか追いつこうと攻撃的な選手を投入する東京に対して、広島も中盤を替えて運動量を上げて対抗します。後半アディショナルタイムには久保のドリブル突破から危ういシュートを打たれましたが林の正面。後半アディショナルタイムには茶島がロングドリブルで時間を使って終了のホイッスルが鳴り響きます。そしてそのすぐ後に甲府の引き分けが知らされると、スタジアム全体が残留確定の歓喜に沸きました。
試合後にヨンソン監督は「始まって5分、10分のところは...慎重になりすぎていた」と語っていますが、確かに序盤は繋がずに蹴るシーンが多く、広島らしさは少なかったかも知れません。しかしFC東京の圧力がそれほど強くないと見るやすぐに流れをつかみ、しっかりとボールを動かしてチャンスを作りました。またFC東京は引いてカウンター狙いを徹底してきましたが、例えば28分にスルーパスで永井に抜け出されたシーンでは林が判断の良い飛び出しでシュートをさせず、そこから繋いで橋本がフリーになったシーンでも水本が身体を投げ出してコースを限定してシュートミスを誘いました。逆に攻撃ですが、今シーズンは引いた相手をなかなか崩せず得点できないことが多かったのに対して昨日の得点はいずれも流れの中から。しかも相手の人数が足りていて守備陣形を整えていたにも関わらず、シュートチャンスを作ってゴールを奪いました。守備でも攻撃でも準備してきた通りのサッカーで狙い通りの結果が得られたと言うことで、このような戦いを続けることができるならJ1残留を勝ち取って当然、と言って良いかも知れません。
ペトロヴィッチ監督から森保監督までで作り上げてきたサッカーが崩壊し、その後新たなサッカーを模索して来た2017年シーズン。ヨンソン監督はシーズン途中からの指揮を執ると言う難しい状況の中で4バックを導入し、選手をいろいろと入れ替えながら、あるいは中盤より前の並びを変えながら新たな戦術を植え付けてきました。この試合はその新しいサッカーが単に「できるようになった」というだけでなく、チーム全体が統一したビジョンの元に自信を持って戦えるようになったということを示しました。ヨンソン監督がここまでフラットな目で選手を見ながら起用を考えるとともに、結果が出なくとも内容の良さに自信を持つように精神的なマネージメントをしてきたことが、ここに来て結果として現れたのだと言えます。「残留争い」と言う長く苦しい戦いを勝ち抜く上で決して安直な方法に流れることなく、正攻法でチーム作りをしてきたヨンソン監督の努力がここに来て実ったと言うことで、監督の手腕は高く評価されるべきだと思います。
そしてそのようなチームの戦いを支えたクラブスタッフとサポーターの力もまた、重要だったのは間違いありません。最終戦の告知活動はクラブスタッフが一丸となってしたそうですが、その結果集まった観客は今季最多の22,333人。今季はこれまで一度も2万人を越えることが無かっただけでなく、川崎F戦では週末のゲームだったにも関わらず久々に1万人を切ったことを考えればいかに集客を頑張ったか、と言うことが分かります。そしてその大観衆の後押しの効果は絶大だったそうで、もしかするとFC東京のパスミスやシュートミスが多かったのもそのせいかも知れません。サポーターの声が大きければ勝てる、と言うものでもないのは確かですが、しかし応援が多ければ多いほどいつも以上の力を出せることもあるもの。このような雰囲気を作ったことも含めて、クラブ全体の力でJ1残留を勝ち取ることができた、と言えるでしょう。この「J1残留」と言う結果はこれによって終わるわけではなく、次の戦いに向けての「始まり」です。そしてそれを乗り越えて行くためには、これまでにやってきたような「一丸」を更に進めることが何よりも必要なのではないでしょうか。
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