雨のエディオンスタジアム広島で行われたJ1リーグ第28節清水戦は、野津田の2ゴールなどで逆転勝ち。横浜FMが引き分けたため、6試合ぶりに首位に立ちました。
前節途中退場したファンは出場を回避したため左サイドには清水が先発。またU-18代表を一時離脱した(たぶん)野津田がベンチに入って次の布陣で戦いました。
西川
塩谷 千葉 水本
青山 森崎和
ミキッチ 清水(→山岸75分)
石原 高萩(→野津田62分)
佐藤(→岡本85分)
SUB:増田、中島、パク、井波
対する清水は、GK:櫛引、DF:平岡(→伊藤90分)、ヨンアピン、杉山、MF:村松、本田(→村田56分)、石毛、河井、FW:大前、高木俊(→竹内90分)、ラドンチッチ、と言うメンバーでした。ファーストシュートはラドンチッチですが、その後は広島がボールを支配します。前半5分には石原が粘って右から入れたクロスを航平がシュート。その後も航平とミキッチを起点に両サイドから攻め込みます。清水は24分に本田のミドルや28分の杉山のシュート、31分のラドンチッチのFK等で広島ゴールに迫りましたが広島守備陣がしっかりと対応します。34分にはCKに石原が合わせましたがポストに弾かれる、と言うシーンを作ったもののそれ以外に見せ場は少なく、静かな流れで前半を折り返しました。
後半は立ち上がりから広島のペース。高萩の浮かせたシュートをGKが危うくクリアしたり、寿人がフリーで抜け出したり、と言うシーンを作ります。逆に清水の攻撃は単発的だったものの、後半9分の右からのクロスに高木俊が合わせてポストに当たり、18分には大前のFKにラドンチッチが頭で合わせたシーンではが西川がフィスティングで逃れるなど危ないシーンを作られます。そして後半24分、ペナルティエリア内で青山が大前と競り合って倒したとしてPKを取られ、そこで大前に決められて先制点を許してしまいました。
しかし広島は先制されても下を向くことはなく、同点を狙って積極的に攻めます。そして後半30分、直前に交代出場していた山岸が仕掛けて逆サイドに抜けるクロス。これを受けたミキッチのマイナスのパスは若干弱くDFが先に触ったのですが、クリアボールに右足を当てに行った塩谷のボールが強烈な弾道となってゴールネットに突き刺さって、広島が同点に追いつきます。続いて後半33分、ミキッチからのパスを受けた野津田が思い切って左足を振り抜くとこれが左ポストに当たってゴールへ。広島が見事な攻撃で試合をひっくり返しました。
その後清水も逆襲を狙って攻勢を強めましたが、広島が速い切り替えで逆襲を許さず流れを渡しません。そして後半42分、ミキッチの浮き球で抜け出した野津田が、GKの動きを見ながらシュートを沈めてダメ押しのゴール。その後ロスタイムに竹内のクロスにラドンチッチが合わせて西川が飛び出す、と言うシーンがあったものの無難に守りきって、終了のホイッスルとともにホームスタジアムは逆転勝利に酔いしれました。
この試合のポイントは何と言っても塩谷の「反動蹴速迅砲」と野津田の2ゴールだと言えます。特に塩谷のゴールは「あそこでクリアされたらカウンターを食らう感じだったので、それを防ごうと思っていたら、あんなシュートになっちゃいました」(本人談)だったそうで、かなり運に恵まれたゴールだったと言って良いでしょう。実際にゴドビ監督も「チャンピオンになった経験を持つチームは、運を味方にする術もわかっている。同点シーンは、我々のクリアしようとしたボールが相手の足に当たってのゴール」と皮肉っぽく語っていますが、そう言いたくなる気持ちも理解できます。清水が先制した5分後にあのようなゴールが決まったことで広島の選手に逆転勝利に向けての勇気を、清水の選手に勝利に対する疑念を生じさせることになったのは間違いなく、その後の展開の布石になったのは間違いありません。
ただこの試合にサンフが勝ったのが運のおかげか、と言うとそれは全く違うでしょう。この試合、このところ序盤に失点することが多かった清水も、守備意識を高く持って戦って結果を出している広島も慎重な入り方をしていたのは確かですが、しかし常にチャレンジを続けて「戦って」いたのは広島の方でした。その結果ボール支配のみならずセカンドボールへの反応も広島が上回っていて、流れ的には広島が先制点を奪うのも時間の問題だった、と言えます。実際には先制点を奪ったのは清水だったわけですが、しかしそのきっかけは主審の微妙なジャッジから。青山がPKを与えたシーンは大前のシミュレーションと判断される可能性もある微妙なものだったわけで、塩谷の同点ゴールも含めて「幸運」は両チームに均等に訪れたとも言えます。そう言う意味では「サッカーの神様」は公平だったと言って良いのではないでしょうか。
しかしながらその後の広島と清水の差は明確でした。時間帯によって攻めるのか守るのかはっきりしていなかった清水に対して、サンフの選手たちのチームとしての意志は明確で、攻めと守りのメリハリがありました。逆転勝利を収めたのは、チームとしての意思統一の違いであり、チームとしての熟成度の違いだったと言っても良いと思います。この日のヒーローとなった野津田投入のきっかけは高萩の突然の怪我だった訳ですが、しかしそのような事態に備えてU-18代表から野津田を呼び戻していたと言う森保監督の判断がまず素晴らしいし、その起用に応えた野津田のプレーも称賛するに足るものだったと思います。そしてその布石となったのは、前節鳥栖戦でのPKを野津田に蹴らせてゴールを決めたこと。まさにチーム一丸となって戦ったことがこの将来性豊かなルーキーをヒーローに成長させたわけで、その点も含めてまさに広島らしい勝利だった、と言って良いのではないでしょうか。
この第28節の結果広島が再び首位に立ったわけですが、しかし4位鹿島までの勝点差は3。横浜FM、浦和も含めた4チームは、ほぼ横一線に並んだ状況となりました。今年の優勝争いは明らかに昨年よりも厳しくなっていると思いますが、しかしそこで生きるのは、何と言っても優勝した体験でしょう。横浜FMも浦和も鹿島も伝統ある強豪でクラブとしての優勝の経験は抱負ですが、しかしながら今いる選手の経験値は広島の方が上なのは間違いないところ。残り試合をこの清水戦のように落ち着いて戦うことができるなら、きっとその先には昨年と同じ栄冠が待っているに違いありません。
ゲキサカ
日刊スポーツ
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