昨日豊田スタジアムで行われたFIFAクラブワールドカップの5位決定戦は、サンフレッチェが蔚山現代を逆転で破り賞金150万ドルを獲得しました。
中2日の連戦が続き「選手たちは疲労困憊、満身創痍」(森保監督)と言うことで、アル・アハリ戦から先発4人を入れ替え。一方8針縫った西川は頬に大きな絆創膏を貼って登場して、以下の布陣で戦いました。
西川
ファン 塩谷 水本
青山 森崎和(→石原79分)
石川 山岸(→清水75分)
(→千葉90+5分)
森崎浩 高萩
佐藤
SUB:増田、原、横竹、森脇、辻尾、ミキッチ、中島、平繁、大崎
対する蔚山は、GK:キム・ヨングォン、DF:イ・ヨン、カク・テヒ、キム・ヨンサム、キム・チゴン(→イ・ジェソン52分)、MF:イ・ホ、キム・スンヨン(→マラニョン76分)、コ・ソルギ、FW:キム・シンウク、イ・グノ、ラフィーニャ、と言うメンバーでした。序盤は高い位置からプレスをかけてきた蔚山に対して、広島はメンバーが変わったこともあってかギクシャクした感じ。クサビのパスがカットされ、クロスを入れるも中に全く合いません。逆に前半7分にはラフィーニャに抜け出されてシュートを打たれるなど危ういシーンを作られます。そして17分、イ・ヨンからのロングフィードをキム・スンヨンが落としたボールにラフィーニャが走ると水本が身体を入れてカバーしますが、バックパスは西川とのコンビネーションが合わずにそのままゴールへ。サンフはつまらないミスで先制点を許してしまいました。
これで動揺したかその後もしばらく押し込まれ、28分にはCKからイ・グノに危険なヘディングシュートを打たれます。しかし徐々に落ち着きを取り戻すと、前半35分に細かなパス交換からFKのチャンスを得ます。森崎浩の曲がり落ちるボールに寿人が頭で合わせたシュートはGKが何とか触ったもののこれに詰めていた山岸が押し込み、早いうちに同点に追いつくことができました。
その後蔚山も押し返し、41分にはキム・シンウクが思い切って打ったシュートがバー直撃。その後もロングボールを中心に攻め込まれましたが身体を張って守りきって、1-1でハーフタイムを迎えました。
後半も開始早々は蔚山ペースでしたが、それを押し返すと後半11分、青山からのパスを受けた山岸がクロス。ここに走り込んだ寿人がわずかに触るとボールはDFの股の間とGKの横を抜けてそのままゴールに吸い込まれ、広島が逆転に成功します。更に後半27分には相手ボールをカットした森崎和から高萩へ。相手に囲まれた高萩はいったんはボールを失ったもののDFに当たって戻ってきたボールを落ち着いてDFラインの裏に出すと、抜け出した寿人が左足で叩き込んで追加点を挙げます。そしてその後の蔚山の反撃を終了間際の1点に抑えて、広島が今季最後の試合を勝利で終わることができました。
この試合を客観的に評価するとすれば、サンフレッチェの内容は悪かった、と言わざるをえないと思います。最後まで目が離せない激しい戦いとなったコリンチャンス×アル・アハリ戦とは比べるまでもなく、またこれまでのサンフレッチェが戦った2試合と比べても、この5位決定戦はミスの多い「しょっぱい」試合でした。ただ、それはサンフレッチェの選手たちが「疲労困憊、満身創痍」だったことを考えれば止むを得ないことだったと言えます。特にDFラインは今季初めての組み合わせでしたし、両サイドも久々の先発出場。逆に蔚山はフィジカルの強さを生かして前からどんどん出てきていたと言うことで、慣れるまで時間がかかるのは当然のことでした。そんな中、前半17分に「中学生以来」(水本)と言うミスが出て先制点を許してしまったわけですから、そのまま試合が壊れてしまう可能性もあったと思います。
ところがサンフレッチェの選手たちは違いました。「自分がなんとかして彼の分を取り返したかった」と言う山岸選手の言葉を引くまでもなく、一致団結してこの逆境をはね返しました。西川は早々に退場したアル・アハリ戦の鬱憤を晴らすように好セーブを連発しましたし、DFラインは勇気を持って押し上げて強烈な高さを持つキム・シンウクを何度もオフサイドの網にかけ、鋭い縦パスで攻撃のリズムを作りました。また両サイドは豊富な運動量で守備と攻撃のリズムを作り得点に絡みましたし、中盤とFWは高い連動性を発揮して蔚山の守備を引き裂きました。内容が悪くても我慢すべきところは我慢して、自らのペースに引き込んで相手を打ち破る。まさに「横綱相撲」とも言うべき戦いで、この1年を締めくくるにふさわしいゲームだった、と思います。
「世界一のクラブ」を決めるこの大会にサンフレッチェが出場できたのは、たまたま開催国になった年にJリーグを制覇した、と言う幸運があったからであって、言わば「ボーナス」のようなものだったと思います。優勝に伴うマスコミ対応やJリーグアウォーズなどに追われながら準備をし、過密日程の中で他チームよりも1試合多く戦わなければならなかったわけで、客観的に言えばとても厳しい状況での参戦だったわけです。従って悪い結果が出る可能性もありましたが、逆にだからこそ伸び伸びと戦うことができた、と言う側面もあったのだろうと思います。この蔚山戦のサンフレッチェはまさにこの2つの面が出たわけですが、それでも勝利と言う結果を出したこと、最後の最後に今季初めて逆転で勝ったと言うことに、この大会を通じての成長を見ることができるのではないでしょうか。
今季はリーグ戦では優勝しながら、ナビスコカップでも天皇杯でも早々に敗退し、Jリーグクラブ相手の練習試合では悉く負けるなどレギュラー以外の選手が出ると途端に勝てなったサンフレッチェ。選手層を厚くする、と言うのは重要な課題の一つだったわけですが、この蔚山戦を見る限りでは着々と成果を出しつつあると言えます。「浦和移籍が決定的」と言われる森脇や、「ハノーファーからオファーか」と言う報道が出ている高萩ら出ていく可能性のある選手もいるので来季の陣容ははっきりしていませんが、しかし仮に現レギュラーに穴が空いたとしてもきっと他の選手が埋めてくれるでしょう。この大会に参加して欧州や南米などの「本当の世界レベル」を体験できなかったのは残念ですが、しかしアフリカやアジアの王者とは対等以上に戦えることが確認できたのは収穫ですし、ACL優勝と言うのも決して大きすぎる夢ではないと言うことも分かりました。来シーズンはJリーグの優勝を目指すのはもちろんのこと、アジア王者をも目指してより強く団結して戦い抜いて欲しいもの。そして年末には再びクラブワールドカップに出場して、今度こそより高いレベルの「世界」にチャレンジして欲しいと思います。
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