昨日のJ1リーグ第25節浦和戦は、前半の3失点が重くのしかかり2-4で敗れました。
代表疲れの残る選手の多い両チームでしたが、どちらも主力は全員出場して戦いました。サンフレッチェのメンバーは、
下田
森崎和 戸田 ストヤノフ
青山
駒野 服部
柏木 森崎浩
(→高柳72分)
佐藤寿 ウェズレイ
SUB:木寺、槙野、盛田、李、桑田、平繁
対する浦和は、GK:都築、DF:坪井、闘莉王(→ネネ85分)、山田、堀之内、MF:ポンテ(→小野59分)、鈴木、平川、長谷部、FW:永井(→ワシントン72分)、田中達、と言うメンバーでした。最初に決定機を作ったのは広島で、前半11分に青山がウェズレイとのワンツーでペナルティエリア内に入り込んでシュートを狙いましたが、都築のセーブに阻まれます。逆に12分、ペナルティエリアの手前でボールを持った田中達が、広島のDFの寄せが甘いと見るや思い切ってシュート。これが下田の届かないところに突き刺さって、あっという間に先制点を奪われてしまいました。
これで余裕が出た浦和はピッチを広く使ってボールを回して相手の隙をうかがいます。思わぬ1失点で腰が引けてしまったサンフは前からプレッシャーをかけることが出来ず、ずるずると下がってしまいます。そんな中で迎えた前半23分、浦和の左サイド深い位置からのFKがファーサイドに飛びます。競り合うDF、飛び出すGK。しかしこのボールに頭を当てた堀之内がボールを落すと、フリーで待ちかまえていた長谷部に頭でゴールに流し込まれてしまいました。
2点リードを許してしまったサンフでしたが、しかし暑さの中浦和の足が止まったこともあって30分頃から攻勢に出ます。28分には森崎浩がミドルシュートを狙いましたが枠外。32分には森崎和のロングパスで抜け出した柏木がCKを取り、そのまま柏木が蹴ったボールはウェズレイがフリーで頭で合わせましたが、狙いすぎたか上に外してしまいます。逆に37分には絵に書いたようなカウンターから永井に決められ、前半で3点のビハインドを背負うことになってしまいました。しかし40分にはウェズレイがペナルティエリアの外25m付近から強烈なシュートを叩き込み、点差を2点に詰めた形で前半を折り返しました。
後半に入ると2点のリードで安心したか守りを固める浦和に対して、サンフが圧倒的に攻めます。7分には戸田のスルーパスからウェズレイが強烈なシュートを放ちましたが枠外。15分には森崎浩のクロスをウェズレイが落して柏木がシュートしますがこれも枠を捉える事ができません。16分には森崎和がミドルシュート。21分にも細かなパス回しから服部がシュートしましたが、ボールは都築がキャッチします。ポンテ、永井を小野とワシントンに代えた浦和。サンフも足が止まった柏木に代えて高柳を投入します。そして37分、中盤でのパス回しから右サイドに抜けた高柳がシュート。このボールは弾かれたものの詰めていた森崎浩がシュートをDFとGKの間に通し、残り10分弱で1点差に迫りました。
同点、逆転の目も出てきたと言うことでますます攻勢を強めるサンフ。しかしそこで冷水を掛けられたのは後半39分のことでした。戸田が鈴木にプレッシャーをかけ、田中達へのパスを狙ったストヤノフの足がボールの上に乗ってしまいます。これを奪った田中達は必死でボールをワシントンへ。ペナルティエリア内で細かなステップを踏んだワシントンは森崎和が足にボールを当てたのもものともせずにゴールにまで運び込み、痛恨の4失点目を喫してしまいました。
しかしこの日のサンフはこれで諦めることはありませんでした。40分には駒野のクロスから逆サイドに上がった服部が仕掛け、43分にはウェズレイがミドルシュートを狙います。そして44分にはストヤノフのスルーパスを受けた佐藤寿が倒されてPKを得ます。自信満々でボールをセットしたウェズレイはGKの動きを見て逆に蹴りましたが、しかしポストの内側に当たったボールは何とそのままゴールを飛び出してしまい、1点差に迫るチャンスを逃します。その後も高柳のドリブル突破や駒野のクロス等で攻め立てるもののゴールを割ることは出来ず、広島の浦和戦未勝利記録が13に伸びてしまいました。
この試合、内容にスコアほどの差があったかと言うとそうではなかった、と思います。シュート数14対10と言うスタッツにも見られるように、チャンスの数だけから言えば浦和とさほど違いはなかった、と思います。特に3点取られた後から盛り返したこと、後半は圧倒したこと、そして一時は1点差に迫ったことなど諦めず攻め続けたことなど、チーム全体の前に行く力は評価して良い、と思います。
ただやはり問題は失点の多さ。今日も失点シーンは身体の寄せが甘かったりマークの受け渡しに失敗したり、と守備の組織の拙さを突かれたものでした。点を取られてはいけない時間帯にあれだけ簡単に点を取られたんではいくらやっても勝てないし、また代表組の疲れのためパフォーマンスが上がらなかった浦和にも、余裕を持って戦いを組み立てさせてしまいました。
なぜ広島がこのようなサッカーになってしまうのか。それはペトロヴィッチ監督がトルコキャンプから取り組んできた攻撃サッカーにある、と言えます。DFラインは相手と数的同数になるのを怖れずどんどん前に出ること。またマイボールの時には最終ラインからでもパスをつなぐこと。そしてボールが前に行った時には両サイドともに攻撃参加して人数をかけて攻めること。これらの基本戦術がある程度浸透したからこそ0-3からでも追い上げることができたわけですが、しかし勝つためにどう守るかと言うことが整理されていないのが失点が減らない原因なのではないか、と思います。
思い出してみれば2001年、ヴァレリー監督がチームを率いた時も似たようなものでした。あの時のバランスの悪さは今以上と言う感じで、久保、藤本、大木の強力な3トップで点は取るものの失点もまたあっさりしたものでした。いくらリードしていても終了間際にひっくり返された試合も多く、まるでザルで水をすくうような戦い方でした。当時ヴァレリー監督は勝てるチームを作るためにいろいろと試行錯誤を繰り返し、4バックを止めて3バックにしたり、3トップも封印したりしてようやく守備が安定して勝てるようになりました。高い理想を掲げてスタートしたもののなかなかうまく行かず、理想と現実をすり合わせながらの戦いでした。
一方ペトロヴィッチ監督は、昨年は理想を追いながらも現実的な戦い方でJ1残留を決めたわけで、おそらく守備を固めて勝ち点をちょっとずつ積み重ねる、と言う戦い方のオプションは持っているはずです。しかしそれはなるべくならしたくない。なぜならそれをやってしまったら、トルコキャンプから積み上げてきたものをリセットすることになるからです。
この敗戦はサポーターとしては哀しいし、また失点シーンは情けないのですが、しかし例えば半年前のガンバ戦を思い返してみてはどうでしょう?あの時はほぼ一方的に殴られっぱなしと言う感じで、チームとしての完成度の違いを見せつけられたものです。それに比べればこの試合を見る限り、やりたいことはある程度はできている。出来ていないのは細かい点だけで、明らかに選手もチームも成長しているのです。監督と言うのは、うまく行かなくなると色々といじりたくなるもの。監督はそれを必死で我慢しているんですから(たぶん)、我々サポーターは信じて応援し続けるしかないのではないでしょうか。
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