クラブ史上初のナビスコ杯ベスト4を賭けて戦った昨日の鹿島戦は、終盤追い上げたものの及ばず得失点差に泣くことになりました。
ペトロヴィッチ監督はU-20代表組の3人はベンチスタートとし、1st legと同じ先発メンバーで臨みました。
下田
森崎和 戸田 盛田(→槙野78分)
青山
李 服部
森崎浩
桑田 高柳(→平繁59分)
(→柏木45分)
ウェズレイ
SUB:木寺、吉弘、高萩、田村
対する鹿島は柳沢、ファボン、中後に加えて登録を済ませたばかりの小笠原も先発から起用して、GK:曽ケ端、DF:内田(→青木71分)、岩政、ファボン、新井場、MF:中後、小笠原、本山(→大岩85分)、野沢、FW:マルキーニョス、柳沢(→ダニーロ74分)、と言うメンバーでした。この試合で最初にチャンスを作ったのは広島で、森崎浩のFKに高柳が頭で合わせ流し込むように狙いましたが上手く当たらず枠外に外れます。また9分にも服部の左からのクロスに高柳が飛び込んだもののわずかにあわず。その後も森崎浩の突破や李のクロスなどでチャンスを作りますが決められません。逆に15分、左サイドの深い位置からの本山のロングボールで抜け出したマルキーニョスがそのまま抜け出してゴール。せっかく押し込みながらも一瞬の隙を突かれて、広島は痛い先制点を許してしまいました。
これで落ち着いた鹿島は、小笠原を中心にボールを動かしパスワークで翻弄します。サンフは31分に高柳が強烈なミドルシュートを放ったものの、それ以外はなかなかチャンスを作れない時間帯が続きます。そして40分、高柳?のワンタッチのパスを小笠原にカットされ、柳沢からマルキーニョスへスルーパス。これをそのまま決められて、2試合通算でも鹿島がリードを奪うことになりました。
後半に入ると柏木を投入して逆襲を図るサンフレッチェ。しかし新布陣が落ち着く前に、またもや得点を許してしまいます。後半2分、左サイドへのロングボールを柳沢と森崎和が競り合います。そこで森崎和が押されたかに見えましたがホイッスルは無く、ボールを奪った柳沢がフリーで中央へクロス。これを盛田?のマークを降り切った野沢が頭で決め、リードは3点に広がってしまいました。
その後しばらくは鹿島ペースが続きましたが、サンフは選手全員の力で盛り返します。12分にはウェズレイの左サイドからのクロスに大外から李が飛び込みましたが合わず。14分には高柳がシュートを狙いましたが目の前のDFに当たります。更に15分にはウェズレイの右からのクロスに柏木が飛び込みましたがわずかに届きません。広島が流れをつかみかけながらなかなか崩せない、と言う展開を打開したのは、カナダでは不完全燃焼に終わった平繁でした。後半18分、青山からのロングボールから平繁が仕掛け、DFを引きつけるとウェズレイへ。ゴール前中央で受けたウェズレイは冷静に持ち替えてシュートし、ようやく1点を返すことができました。
これで勢いのついたサンフは、その後は波状攻撃で鹿島に襲いかかります。20分には素早いリスタートからゴール前を横切るクロスが入りましたがファボンが必死のクリア。22分には青山がミドルシュートを打ちましたが枠外。26分にもCKからのボールがウェズレイにつながりフリーで打ちましたがこれも枠外に外れます。選手交代で何とか流れを取り戻そうとする鹿島。しかし広島の勢いは止まりません。32分にはウェズレイがペナルティエリアのすぐ外からFKで狙いましたがバーのわずかに上。37分には柏木がドリブルからスルーパスを狙いましたが、平繁とのタイミングが合いません。終盤は戸田を中盤に上げて2バックのようにして攻めたものの、引いて守る鹿島の守備は崩れず。最後はロングボールを打ち込んだりもしたものの効果はなく、1点及ばずナビスコ杯敗退が決まりました。
この試合のポイントは、どちらのチームも1週間前の結果をどのように生かすか、と言うことだったと思います。戸田が「この試合を覚えておいて欲しい」と言うほどの好内容だった広島は、そのままの流れを生かすべく同じメンバーで戦ったのに対して、鹿島は11人中5人を入れ替えてきました。そして立ち上がりは前の試合の内容そのままに、サンフレッチェが何度もチャンスを作りました。ここで広島が点を奪うことができていれば、おそらく試合の流れは全く違ったものになっていたでしょう。ところが先制点は鹿島。本山からの1本のパスからマルキーニョスにあっさりと決められてしまいました。また2点目も中盤でのパスカットからあっという間にゴール前でフリーにさせてしまった、と言うもので、あまりにもあっけない失点でした。更に3点目も、柳沢と野沢の2人で取られてしまったようなものでした。変える、と言うことはリスクを伴うものですが、その賭けに勝ったのが鹿島で、広島は結局のところそれを打ち破るだけの力がなかった。それがこの試合の簡単な総括だと言えるでしょう。
そしてこの結果は、現在のサンフレッチェの到達点として正面から受け止めなければならない、と思います。この試合のスタッツを見ると、シュート数は鹿島の13に対して広島は12で、決定機の数もそれほど変わらなかったどころか広島の方が上だったかも知れません。しかし広島は枠内シュートがゴールを含めて2つしか無かったのに対して、鹿島は11本が枠内でした。試合展開的に鹿島が落ち着いて進める事ができた時間帯が長かったからかも知れませんが、それにしてもゴール前での落ち着きと言う点で鹿島が上だった、と言わざるをえません。またそれは、試合の流れを読む目、と言う点でも言えるように思います。鹿島は相手の攻勢を受け止めてカウンターから先制点を奪い、つかんだ流れを失う前に追加点を奪って2試合トータルでリードを奪い、後半開始早々に突き放す。そしてその後は守りを固めてそのまま逃げ切ると言う、「アウェイで負けたチームはこう戦うのが理想です」とお手本を示したような戦い方でした。選手一人ひとりのクォリティの高さだけでなくチーム全体での戦術理解が高いからこそできるやり方で、その点で広島は鹿島に一歩も二歩も前を行かれていた、と言わざるをえないでしょう。
とは言え、この結果を悲観する必要はない、とも思うのです。3点のリードを許しながら後半途中から逆襲し、あと1点取ればトータルで勝ち抜きできる、と言うところまで行ったと言うのは、前回のアウェイの鹿島戦を考えれば決して悪くは無かったと思います。実際ある時間帯は鹿島も相当慌てていましたし、後半から投入されたU-20代表組もチームを活性化させるのに貢献しました。経験豊富な選手が多く、代表にも招集されていなかった鹿島の方が上を行っていたのはある意味当然のこと。その相手に20歳前後の選手を中心に食い下がったのは確かなのです。敗戦は悔しいのですが、しかしこのような悔しさを味わうことができたのも準々決勝まで進出したからこそ。本当に強いチームになるためには何をしなければならないのか、選手とクラブ、そしてサポーターがこの敗戦から学ぶことが、何より重要なのではないでしょうか。
日刊スポーツスコア
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