昨日ビッグアーチで行われた第27節FC東京戦は、2点の先行を許したものの5点を奪って逆転で勝ち、勝ち点を30に乗せました。
怪我のダバツはやはり昨日も無理でサイン会要員となり、甲府戦と同じメンバーでスタートすることになりました。
下田
森崎和 戸田 盛田
青山
駒野(→李50分) 服部
柏木 森崎浩(→高柳88分)
佐藤寿 ウェズレイ
(→前田28分)
SUB:木寺、八田、中里、上野
対するFC東京のメンバーは、GK:土肥、DF:茂庭、ジャーン、藤山、徳永、MF:今野、三浦(→宮沢73分)、戸田、石川(→川口85分)、梶山、FW:平山(ルーカス45分)。序盤は森崎浩が積極的にミドルを狙って行ったものの、全体的に動きが硬くなかなかボールを前に運べません。逆に東京は平山の頭を、あるいはDFラインの裏を狙ってロングボールを蹴ってきて、ラインを下げさせられ攻勢を許します。そして8分には東京が左サイドからFKのチャンス。梶山のボールに下田が飛び出したもののクリアしきれず、ルーズボールをジャーンに決められ先制点を許してしまいました。更に13分には右からの放り込みをクリアしたもののそのボールをペナルティエリアの前で梶山に拾われ、フリーで打たれてあっという間に2点差を付けられてしまいました。
その後もなかなか攻めの糸口をつかむことが出来なかったサンフでしたが、21分に1点差に迫ります。中盤で柏木が倒されて得たチャンスから素早いリスタートで左に展開し、ウェズレイが戻したボールを柏木がファーサイドにロビングのパス。これでフリーになった佐藤寿がジャンピングボレーで叩き込み、嫌な流れを断ち切ることが出来ました。
続く28分、この日2つ目のターニングポイントとなる事が起きます。直前にオフサイドの笛の後で蹴ったと言うことでイエローカードを受けた佐藤寿が、前田との交代でピッチから下がります。ここまで16ゴールを決めているエースを欠いて大丈夫か?と一瞬思いましたが、しかし前田が低い位置まで下りてキープし柏木が周囲を走り回り、ウェズレイを高い位置に押し出すことでペースを握ります。35分には森崎浩のシュートのこぼれを前田が拾ってシュート。40分には柏木のパスでDFラインの裏に抜け出した前田が右足でシュートしましたが大きく上に外れます。引いて守りを固める東京はカウンターからチャンスを作ろうとしますが、戸田を中心にした守備陣は30分以降の東京のシュートを1本に抑えます。序盤の劣勢を押し返し、同点になるのも時間の問題か、と言う流れで前半を折り返すことになりました。
平山に代えて後半からルーカスを投入してきた倉又監督。最初は東京がペースを握り、この采配が当たったかに見えました。2分にはロングクロスに梶山が頭で合わせましたが下田が好セーブ。5分には右から左から何度もクロスを放り込まれ、7分には広島の右サイドから中央に進入した石川がミドルを狙います。5分には駒野が足の爪が割れたと言うことで李に交代。日本代表2人を同時に欠いた戦いを余儀なくされます。2週間ぶりの登場となった李は、その鬱憤を晴らすかのように常に高い位置をキープして、何度も右からチャンスを作ります。10分には李の低いクロスにウェズレイが合わせようとしましたがわずかにヒットせず。14分には青山のロングパスで抜け出したウェズレイがフリーでシュートしましたがふかしてしまいます。17分には戸田の展開のパスから李が右サイドを突破。これを前田、柏木が繋ぎ、李のからウェズレイがオーバーヘッドでシュートし、こぼれに前田が走り込みましたが及びません。そして18分、またもや戸田の展開から李が右サイドを深く破り、そのクロスを折り返した服部のボールをウェズレイが胸でワントラップ。そのままオーバーヘッドで叩き込み、見事な攻撃で同点に追いつきました。
続いて20分。柏木が倒されて得たFKを素早く右に展開し、前田、柏木がつないでウェズレイがゴール前を横切るクロス。森崎浩は届かなかったもののファーに詰めていた李が叩き込み、一気に逆転してしまいます。この後のサンフはやりたい放題。足が止まって気持ちもダウンした東京にサッカーをさせません。2列目だけでなくボランチやDFまでが前線に顔を出し、東京陣内を蹂躙します。そして26分、盛田のクリアボールを拾ったウェズレイが反転すると前田へ。前田はドリブル突破する、と見せかけて後ろに戻すと、ここに走り込んだ森崎浩が右足でミドルシュートを決めてリードを2点に広げました。
思うようにいかない東京は宮沢を投入し、何とか流れを変えようとします。29分には石川のクロスから2度今野に決定的なシュートを打たれましたが下田がスーパーセーブ。32分には今野のクロスをつながれ戸田光が押し込みましたがオフサイドに助けられます。逆に33分には盛田のクリアボールで抜け出したウェズレイが、狙い澄ましてループシュートを打ちましたが惜しくもバー。36分にも服部のクロスにウェズレイが頭で合わせましたが枠外に外れます。38分には李が、43分には柏木が相手ゴール前まで迫りましたがシュートまで行けず。45分にも李のパスで抜け出したウェズレイがフリーでシュートしましたが決められません。そして後半ロスタイム、低い位置で前田がボールを奪うと右サイドに展開。これを受けた高柳の強烈なミドルは土肥に弾かれましたが、こぼれを拾ってクロスを入れるとこれがウェズレイにドンピシャ。しっかりと頭に当ててゴールネットを揺らし、この日のゴールショーを締めくくりました。
試合後にペトロヴィッチ監督は「広島に来て15試合、今日みたいな試合は初めてだ...前半は私が指揮を執った中で最悪の試合だった...後半、私が来た中で最高の内容となった」と語っていますが、この感想は監督だけではない、と思います。前半の立ち上がりは全体的に腰が引けてラインが下がりっぱなし。ミスを怖れるがゆえにかえってミスの連鎖が続く、と言う感じで、ほとんど自分たちのサッカーが出来ていませんでした。最初の15分間に許したシュート2本がいずれもネットを揺らしてしまった、と言うのは不運な面もあったと思うのですが、それ以前に試合に臨む気持ちが全くできていなかった、としか思えないような内容だったと思います。
しかしそんな中でも戦う気持ちを失わなかったのが、立ち上がりから積極的にシュートを狙っていた森崎浩であり、また怪我を負ったにも関わらず追撃の1点を取った佐藤寿だった、と思います。良く言われるように2-0と言うのは、サッカーにおいては危険な点差です。ここでどちらが先に点を取るかは、試合の趨勢を決める上で重要です。その1点を佐藤寿が奪ったことで、広島の選手達は息を吹き返し、FC東京の選手達は気持ちが守りに入ってしまいました。結局佐藤寿はゴール後に7分間だけプレーしてピッチから去りましたが、あれだけ我慢強い彼が自ら下がると言うことは余程痛かったはず。それでもきっちり1点を返したところは、まさにエースらしい働きだったと言って良いでしょう。
ただそれ以上に素晴らしかったのは、交代で入った選手達の躍動でした。まずは前半途中から投入された前田。走る量こそまだ少ない感じはあるものの、ボールのあるところにきっちりと顔を出して何度もチャンスに絡みました。ゴールこそなかったもののアシストは記録しましたし、また高い位置でのキープやシュート、決定的なパスなどで勝利に貢献しました。今年はシーズン前から大きく期待されながら出場機会も少ないままにここまで来てしまいましたが、ここまでの時間は決して無駄ではなかった、と言うことが分かるプレーぶりだったと思います。そして、それに輪をかけて素晴らしかったのは李漢宰。ペトロヴィッチ監督になってから何度もチャンスを与えられながらなかなか結果を出せず、「僕はヒーローになれない器」だとまで自分のHPで書いていた彼でしたが、しかしそれでも腐らず努力し続けたことがここに結果として出たのでしょう。彼の積極的な上がりと鋭いクロス、そしてリードを奪うことになった3点目のゴールは、昨日の勝因の一つだったことは間違いない、と思います。更に終了間際に出た高柳もロスタイムのチャンスに上がって強烈なシュートを放ち、最後はウェズレイのゴールをアシストしました。前節は最後まで選手を代えずに控え選手を信頼していないのか、と思わせたペトロヴィッチ監督でしたが、ここぞと言うところでスパッと代えて、そしてその選手達の活躍がチームを勝利に導いたと言うのは「チーム作り」がうまく行っている証拠だ、と言って良いのでは?試合後の会見で「監督がどうこうではなく、選手がやったことが重要だ」と語っていましたが、しかしそのように選手が力を出せるような状況に持って行ったのは監督である、と言うのもまた間違いないでしょう。この勝利はペトロヴィッチ監督とそのスタッフ、そして彼に指導された選手達がこの3ヶ月間頑張ってきたことに対する正当な報酬だ、と言って良いのではないでしょうか。
この勝利でサンフレッチェは勝ち点を30の大台に乗せ、16位との勝ち点差を10に広げました。以前も書いたように残留の目安は勝ち点34程度なのでまだまだ安全圏とは言えません(実際、昨年の柏は第27節時点での勝ち点が30だった)が、しかし現実問題として下の3チームが今後の7試合で3勝1分け以上の成績を収める可能性はそれほど高くない事を考えれば、これでほぼ残留が決まったと言って良いかも知れません。ただここで問い直さなければならないのは、「J1残留さえすれば良いのか」と言うことでしょう。サンフレッチェと言うチームの将来を考えた場合、15位ならば満足か、と言うことでしょう。前節は昇格組の甲府に完成度の違いを見せつけられてしまった広島ですが、しかしそれは全体的な流れからすればマイナーなことでしかない、と思うのです。昨日の結果はそのまま東京とのチーム力と完成度の違いだったと思いますし、サンフにそれだけの力がある事を示すことができたのだ、と思うのです。だいたいこれまでもG大阪や浦和、川崎F等に対して正面からぶつかってもう少しのところまで行っていたわけで、このような勝利にも驚く必要はないのです。むしろこれだけの戦いができて当然のチームなのだ、と言っても良いと思います。サンフレッチェが決して15位にとどまるようなチームではない、と言うことはJリーグをしっかり見ている人ならみんな分かっているはず。それを単なる印象で終らせることなく結果として示すことが、これからシーズン終了までにすべきことなのではないかと思います。
次節はC大阪が相手で、1試合おいて福岡、京都が続きます。どのチームも広島の順位を目標にしているわけで、きっと凄い気迫で来るはずです。そこで自分たちのサッカーを貫くことが出来るかどうか。そして勝ちたいと言う気持ちで負けないかどうか。それが今後のサンフレッチェにとって、最も重要な事になるのではないでしょうか。