Jリーグ2nd stage第11節のFC東京戦は、またも勝ちきれずに引き分け。4試合連続引き分けと、シーズン引き分け12のJ1リーグタイ記録に並びました。
前節と同じメンバーを登録したサンフは、先発の大木を森崎浩に入れ替えて次の布陣で臨みました。
下田
リカルド 小村 吉弘
駒野 森崎和 李 服部
(→吉田60分) (→前田77分)
森崎浩 ベット
(→大木45分)
盛田
SUB:林、中山
対するFC東京は水曜日に備えてケリー、三浦、金沢を温存して、GK:土肥、DF:加地、茂庭、ジャーン、藤山、MF:石川(→戸田59分)、今野、宮沢(→馬場52分)、鈴木規、FW:ルーカス、梶山(→増嶋82分)。冷たい雨が降る中広島ボールでのキックオフとなりましたが、最初に攻勢を仕掛けてきたのは東京。いきなり梶山がミドルシュートを放ち、6分にはルーカスがシュートを放っていずれも下田がセーブします。しかしサンフは8分にゴール正面やや右寄りで得たFKで、凄いトリックプレーを見せて流れを引き寄せます。森崎浩がボールを直そうと言う感じで近づいてちょんとボールを浮かせると、これを森崎和がふわっと壁の裏へ。ここに走り込んだ小村が右足でボレーシュートを放ちましたが惜しくもボールは枠外に外れます。続いて11分には右からのCKに長駆走り込んだ服部がボレーシュートを打ちましたが、このボールは激しくポストを叩きます。「最初の、ボールをセットしつつフワリとあげて裏に出すキックのような、あんなトリッキーなことをやられたために、選手たちがバタバタと慌ててしまった。しかも、その直後にコーナーキックで遠くから走り込んだ服部に合わせられたことも、動揺に輪をかけた」(FC東京・原監督)との言葉通り、これでペースを掴んだサンフは前半15分に先制します。森崎浩が蹴ったCKのボールを吉弘が相手と競り合って落とすと、ファーサイドで待ち構えていた森崎和に渡ります。完全にフリーになった森崎和は落ち着いて胸でトラップすると強烈なシュート。このボールはファーサイドのポストに当たってゴールに飛び込み、ホーム300点目のメモリアルゴールとなりました。
その後は高い位置でボールを奪って速く攻めるというサンフのサッカーがうまく機能して、チャンスを量産します。27分には森崎和のスルーパスで抜け出したベットがシュートをしましたが茂庭がカバー、更に盛田が抜けてシュートを放ちましたがGKに当たります。31分には吉弘のスルーパスを受けたベットが反転してミドルシュートを打ちましたが惜しくも枠外。FC東京も両サイドの攻撃から何とか打開しようとしますがサンフ守備陣の集中は高く得点を許しません。前半はサンフの良い面が目立って1点リードのまま折り返しました。
後半、小野監督は森崎浩に代えて大木を投入します。機能していたのになぜだろう、とその時は不思議だったのですが、森崎浩は前半の接触プレーで左目を痛めて「視界が白っぽくなって」(森崎浩)しまっていたとの事。やれないことはなかったものの大事を取ったということでしたが、しかしこれで流れが変わってしまいます。早めに放り込んで来る東京にペースを握られると、後半7分に加地が入れたアーリークロスを鈴木規が競り合って落とし、ボールを拾ったルーカスにシュートを決められ同点に追いつかれてしまいました。
その後、サンフは細かいパス交換から相手を崩そうとしますが、チャンスに前半ほど人数をかけられなくなり攻め切れなくなってしまいます。ややパフォーマンスが落ちた駒野に代えて吉田を入れて守備は落ち着きましたが、逆に攻めの圧力を高めることが出来なくなります。19分には盛田が頭でシュートしましたがGK正面。26分には李がミドルシュートを打ちましたが枠を大きく外れます。逆にFC東京はロングボール中心の単調な攻撃でしたが、28分には戸田にDFラインの裏に抜け出されて決定的なシーンを作られてしまいます。後半32分にサンフは切り札・前田を投入しましたが、さすがに研究されていたようでドリブル突破がほとんど通用しません。両チームとも必死のプレーを見せたものの気持ちに身体が付いてこない、と言う感じで、最後はお疲れモードで勝ち点1を分け合いました。
試合後のコメントによると、原監督は「勝点1をとったことで、次につなげたい」とほっとした雰囲気だった模様。FC東京はやはりナビスコ杯の決勝が気になって仕方がない、と言う感じで、この試合は負けなくて良かったと言うのが正直なところだったのではないでしょうか。逆にサンフは「とにかく勝点3をとりたかったので、私も選手も悔しさでいっぱいだ」(小野監督)、「勝点3をとりたかった。いい前半だったのに、後半追いつかれて引き分けになり、とても悔しい」(ベット)、「悔しい引き分けです」(森崎和)、「勝たないといけない試合でした」(李)と一様に悔しさが滲み出るようなコメントを残しています。
この試合、相手の立ち上がりのラッシュを凌いで自分たちのペースに持ち込んだ前半は、ほぼ理想的な展開でした。トリッキーなセットプレーを連発して相手を精神的に追い詰め、その流れで点を取ってしまうと言う戦い方は、落ち着きと余裕と、そして風格さえも感じさせる素晴らしいものでした。その後に立て続けに迎えたチャンスに追加点を挙げる事ができたなら、そのまま圧勝していても不思議ではなかった、と思います。また後半立ち上がりにちょっとだけ相手に流れた時間帯を無失点で凌ぐ事ができれば、そのまま1-0で余裕を持って逃げきれたのではないか、とも思います。同点に追いつかれて以降は無用な失点を避けて勝ち点1を確保できたのは評価できますが、しかし勝ち点2を落としたのも確か。今のサンフレッチェの強さと弱さの両面を、またもや見せられた試合だったと言って良いのではないでしょうか。
この引き分けで年間勝ち点は27。順位は相変わらず12位ですが、最下位C大阪との勝ち点差は9に広がり次節にもJ1残留が決まる、と言う状況になってきました。まだ油断はできないものの、サンフと13位以下のチーム状況を考えれば、今後4試合でサンフが最下位に沈む可能性は限りなく少なくなったと言って良いでしょう。しかし、だからこそここで更に上を目指さなければならないのだと思います。来年以降本当に優勝争いができるようなチームになれるのか、その可能性が見られるような戦いをしなければならない、と思います。残り4試合の相手は名古屋、磐田、大分、浦和。一筋縄ではいかない相手ばかりですが、だからこそそこで良いサッカーを見せて欲しいし、勝ちにこだわって欲しい。今年は結局優勝争いに絡むことはできませんでしたが、ここから全部勝つぐらいの勢いを見せて、来季に繋げて欲しいと思います。