厳しさと辛さと、そして切なさと〜J2水戸×京都
昨日笠松運動公園陸上競技場で行われたJ2リーグ第30節、水戸がホームに京都を迎えたゲームを見て来ました。前節までの水戸は勝ち点33の10位。自動昇格圏からは勝ち点17、入れ替え戦出場の3位からは11離されています。エース・デルリスを札幌に奪われ、マルキーニョを怪我で欠き、深津も出場停止。そのためかどうか前節は山形相手に0-3で完敗を喫していて、頼りはホームでは6試合連続負けなし、と言うデータぐらいでした。
対する京都は、ここまで勝ち点64。第3クールに入ってペースは落ちているものの、2位福岡との勝ち点差はいまだに14もあって首位を楽々キープしています。J1昇格のためには一つの油断もできない、とは言え圧倒的有利は明らかで、この日は当然勝ち点3を期待してアウェイに乗り込んで来たに違いありません。
笠松運動公園は、最寄りのJR常磐線東海駅からバスで15分程度。歩いて歩けない距離ではないものの、決して便利とは言えない場所にあります。しかしそれでも京都から来たサポーターはその数およそ100人。迎え撃つ水戸は、バックスタンドに陣取ったサポーターグループにメインスタンドの観客が呼応して、2千人強と言う観客数を感じさせない応援を繰り広げていました。
試合は、両チームともラインを上げて中盤をコンパクトにして戦おう、と言う戦術です。しかしその中で「勝ちたい」と言う意思をより鮮明に打ち出したのは水戸の方でした。攻めに入ったときはピッチをワイドに使ってサイドから。ボールを奪われたら切り替えを速くして中央を固める。サッカーの基本的な戦術を忠実に守った真面目なサッカーを展開します。逆に京都はアレモンのワントップの下にパウリーニョを置き、その後ろにMFとDFを4人ずつフラットに並べる布陣。技術のある外国人にボールを当てて、中央に相手を引き寄せてサイドを破ろうと言う意図だったと思われます。しかし前半の京都はサポートが遅くパス回しのアイディアもなく、水戸の集中した守備を崩す事ができません。前半39分、京都はDF(リカルドだったかも)の軽率なプレーで与えたCKから一瞬の隙を突かれて失点。水戸にとっては願ってもない形での得点で、1点リードのままで前半を折り返すことになりました。
「勝とうと言う気持ちが感じられなかった」と語気を荒めた柱谷監督(エル・ゴラッソによる)は後半から中盤を2枚減らし、田原と六車を投入して前線の層を厚くします。しかし京都の攻撃陣は前線に張り付いてボールが来るのを待っているだけ。中払不在の中盤は何も意外性のあるプレーを見せることができずに膠着します。水戸は高い集中力でゴール前に人垣を作り、相手を一瞬たりともフリーにさせません。中でも正GK本間の風邪で急遽起用された武田が「守護神」と言う名にふさわしい大当たり。神懸かりとも言えるセービングで、自陣ゴールに鍵をかけます。
しかし後半16分、前半から何度も相手左サイドを脅かしていた加藤大志がドリブルで突っかけると、左SBの吉瀬が思わず倒してしまいます。2枚目のイエローカード。もちろん退場。数的有利になった京都は、DFを1枚外して星を投入し、貝のように閉じこもった水戸の守備をこじ開けるべく、激しく攻めたてます。そして後半24分、右サイドでボールを拾った加藤が果敢に突入してシュートを叩き込み、京都はようやく同点に追いつきました。
これで閉じこもってばかりはいられなくなった水戸は、カウンターから何度か京都陣内に攻め入ります。しかしゴールを脅かすまでには至らず、ほぼ一方的に京都の時間が続きます。後半の京都のシュートは実に23本。しかしゴールマウスを捉えたシュートは武田にことごとく弾き出され、いっそう力んで放ったシュートは枠を大きく外れていきます。京都は最後はGKを除く10人が水戸陣内に入って総攻撃を仕掛けたものの水戸の集中した守備を崩すことはできず、結局1対1のドローに終わりました。
私にとってのJ2は2003年11月15日が最後。サンフレッチェがJ1復帰を決めた、鳥栖戦以来1年10か月ぶりのことでした。たまたま東海に出張で来ていて、たまたま試合のあったので見に行くか、と言う軽い気持ちでスタジアムに来たのですが、しかしそんな緩い気持ちをぶち破るような熱く激しいゲームに心を揺さぶられました。ただ、それはいわゆるスポーツの感動、と言うものとは質の違うものだったのではないか、と思うのです。単に勝利のために全力を尽くしていたから感動したわけではなく、もっと辛いもの、そして切ないものを感じたからなのではないか、と思うのです。
一昨年の経験からしても、やはりJ2はJ1とは違う舞台です。J1昇格を目指すクラブにとっては、ここは一年でも早く抜け出さなければならないステージ。首位を走る京都と言えど、負けや引き分けは一歩後退を意味します。1つ勝っても次に勝てる保証など全くなく、一つ一つの勝ち星を積み上げていくしかありません。勝っても負けても引き分けでも、その胸に浮かぶのは更なる勝利への渇望だけ。44試合の長丁場の戦いは、まるで永遠に続くようにさえ思えてきます。
対してJ1昇格の望みの薄いチームの選手にとっては、1試合1試合がプロとしての崖っぷちです。ここで良いプレーを見せなければ、次のチャンスは無いかもしれない。今年活躍できなければ、来年は契約してもらえないかもしれない。そんな切羽詰まった気持ちがプレー一つ一つに現れてくるのです。
サッカーの質、と言う意味では確かにJ1の方が上かも知れません。しかし試合の面白さの点では、J2だって負けていない。むしろ試合に賭ける切実な気持ちとそれが醸し出す厳しさ、辛さは、J2の方が上かも知れません。私は満足そうな顔で家路につく水戸サポーターと一緒に歩きながら、サッカーファンとしてまた見に来ようかな、と思いました。
#とは言え、サンフレッチェがJ2で戦うことになるのは二度とごめんですが。
追記:この試合にたまたま闘莉王が見に来ていたそうです。ハーフタイムにメインスタンドを歩いていたらたくさんのファンがサインをねだったりカメラで映したりしていたのですが、それが闘莉王だったのかな。全然気づかなかった...(^_^;)
追記2:リカルドはCBとして相変わらず落ち着いたプレーを見せていました。ただ、ディフェンスリーダーは鈴木悟に任せてやや上がり目の位置。彼はああいうポジションの方が生きるんですね、やっぱり。
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コメント
仰る通り、J2には独特のトゲトゲした風合いがありますね。長丁場も相まって、サポにとっても過酷なリーグだと思います。
試合のほうですが、京都は特に前半において「切羽詰まった気持ち」が欠けていました。あれでは厳しい。
リカルドの守備での「落ち着き」は正直、功罪相半ばと言った感じです。
投稿: kozaru | 2005.09.07 00:21
kozaruさん、こんにちは。ようこそいらっしゃいました。
リカルドの「落ち着いた守備」と言うか落ち着きすぎてピンチになる事があるのは、まあ「仕様」なので仕方ないでしょうね。(^_^;) それよりむしろ、非常に頻繁に攻め上がっていたのが少々意外でした。あれは柱谷監督の戦術なのでしょうか?それともチームにカツを入れるために自分で判断して上がっているのでしょうか?
投稿: せと☆ひでき | 2005.09.07 07:25
おそらく自分の判断だと思います。この試合では展開もあって全員攻撃の玉砕戦法でしたが、前々節あたりにボールカットし自らカウンターという形で何度もチャンスを演出しており、その流れのまま来ている感じです。これからチームとしての戦術になっていくかも知れません。
投稿: kozaru | 2005.09.08 00:34