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2007/08/20

研究者への道II(3)

しかし、マイクロエマルションに高圧をかけると言う実験で本当に面白い結果が出たのは翌年(97年?)のことだった。博士課程に進学した長尾さんと一緒に「何か新しいことをやってみよう」と考えて、いくつかのテーマを準備してSANS-Uでの実験に臨んだのが確か5月ごろのこと。その中で水と油の組成を同じにしてAOTと混合した系に圧力をかけたところ、綺麗な相転移が見えた時は本当に興奮した。長尾さんにまずはconference paperとしてまとめてもらい、続けて再現性のチェックの実験や条件を変えた実験を行い、ようやくPhysical Review Eに論文が出たのが99年のことだった。その間に長尾さんは一足先にこの結果を認めてもらった形で物性研の助手になり、その後温度変化の実験なども行った結果をまとめて東大で論文博士の学位をもらった。

一方私は、と言うと広大の学生と一緒にX線小角散乱の実験を行ってJournal of Chemical Physicsなどに論文を書き、あるReview Paperで「重要な論文の一つ」として紹介されたりもした。その後川端さん(現首都大)と一緒にやった中性子スピンエコー実験では、世界最初の加圧下でのNSE実験と言うことでその成果はPhysical Review Lettersに載ることになる。更に日本油化学会の学会誌「オレオサイエンス」に掲載された総説論文では、その年の論文賞をもらうことになった。

好村先生からの勧めで始めたソフトマターの実験。マイクロエマルションを選んだのも、圧力を選んだのもかなり偶然に左右されてのものだったが、たまたまやってみた実験で良い結果が出たと言うところに、自分の運の良さを感じずにはいられない。その時その時で良い学生に恵まれたことや、新しいことを始めようとするタイミングで研究費が当たったことなども含めて、私が研究者として自立する上で非常に重要な結果だった、と言って良いであろう。そしてこれによってテーマ選びから研究資金の獲得、マシンタイムの確保、実験、そして学生の育成や論文としてまとめるところまで「研究」の一連の流れをほぼ自分の力だけでできたと言うことで、ようやく自分が「研究者」になれた、と実感することができたのである。

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