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2006/03/13

これが「フェアプレーの国」か?

サッカージャーナリストの後藤健生さんの著書「世界サッカー紀行」(文藝春秋社刊)に、次のような一節があります。

「強いものが正当に勝てるようにするためには、審判の誤審などということもできる限り排除しなければならない。そのためには、ビデオテープを駆使したり、ダウンボールの位置を正確に計測するために、チェーンを持ち出したりする。審判の人数も多いにこしたことはない。
 不条理が支配する旧大陸から新大陸に逃れて、合理的で正義に立脚した社会を打ち立てようとしたアメリカ建国の精神からすれば、これも当然の希求である。」

 これは、不条理なスポーツであるサッカーがなぜアメリカでは人気が出ないのか、と言うことを説明した文章です。広いピッチをボールと人が激しく動き回るスポーツなのにたった3人でジャッジする、と言うサッカー。誤審が問題になることも多いものの、それもサッカーのうち、と言う文化のもとに成り立っています。それに対してアメリカのスポーツは、だいたいにおいてなるべく審判のミスジャッジが無いように出来ています。ルールを厳密に決め、複数の審判を置いて二重、三重にチェックを行ない、時にはビデオまで使って正確にジャッジするように努力する。それがアメリカのスポーツの文化だ、と言えるのだと思います。

 後藤健生さんの文章を持ち出すまでもなく、アメリカは自分たちを「自由の国」だと称しています。一番頑張ったものが成功できる社会。その基礎には、万人に等しく機会を与えると言う「フェアプレーの精神」がある、と言うことになっています。スポーツが社会を映す鏡だとすれば、野球やバスケットボール、アメリカンフットボールなどは皆同じ。これらアメリカンスポーツの審判のあり方にこそ、その精神が現れているのだろう、と思います。

 ところが今朝行われていた「ワールド・ベースボール・クラシック」で残念な場面がありました。日本対アメリカの8回表。1アウト満塁で岩村のレフトフライでタッチアップした西岡が、離塁が早すぎたとのアピールでアウトになってしまった、と言うシーンです。一度は塁審がセーフの判定を下したのに、アメリカの監督がアピールしたのを主審が受け入れてあっさりと判定を覆してアウト、の判定。結局このジャッジが、この試合の勝敗までも左右することになってしまいました。

 日本代表の王監督が試合後に「ベースボール発祥の地がこんなことでは困る」と語っていたように、このミスジャッジ(少なくともビデオで見る限り、西岡の離塁は明らかにレフトがボールをキャッチした後だった)は、「フェアプレーの国」のスポーツの結末としては、少々お粗末だと言わざるを得ません。少なくともせっかく実現した野球の世界一を決める真剣勝負の価値を、下げることになりかねないと思うのです。

 とは言え、これがアメリカ合衆国の精神と相容れないか、と言うとそれはまた別問題だと言う気もします。なぜならアメリカにとってベースボールは国技。初めての本当の世界一を決める大会で、万が一にもアメリカが負ける事は許されません。となれば、少々のミスジャッジには目をつぶるどころか、アメリカを勝たせた審判に喝采を送る。それが正しいアメリカ人の態度、と言うものなのでしょう。

 実際後藤健生氏も、同じ著書で次のように書いています。

「アメリカ人にとっては、競争というものはすべてそうあるべきなのだ。政治や経済の分野でもそうだ。貿易競争をして、強いはずのアメリカが負けたとしたら、それは貿易相手国が不公正な手段を使ったか、あるいはルールに欠陥があるに違いない。従って、アメリカが勝てるようにルールを変えるか、相手国に制裁を加えようということになる。それは、アメリカにとっては国益であると同時に、正義なのだ。」

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コメント

WBCはなんと日本の優勝という結果。結局、高校野球で高度に訓練された組織プレーの成果、イチローのやる気というのが大きな要因だったような気がする。それにしてもロッテ、ソフトバンクの選手たちの勢いはいかにフロント、指導者が大事かというのを見せてくれた。そして、やがてイチローがいうようにこのメンバーに近い編成でクラブチームとしてリーグ戦をと夢をみたくなった。

投稿: akio | 2006/03/26 13:01

この大会のイチローは、本当に素晴らしかったと思います。このところマリナーズの調子が悪く「チーム」での戦いに喜びを見いだしにくかった、と言う状況もあったのだろうと思いますが、それ以上に日本の野球界に対する自分の責任、と言うものを感じていたのではないでしょうか。

投稿: 瀬戸秀紀 | 2006/03/31 08:03

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