« 2005年2月 | トップページ | 2005年4月 »

2005/03/18

動き回る油滴の話

最近、共同通信のニュース日刊スポーツ等で取り上げられている「自分で動き回る油滴」の話ですが、実はこれ、私が所属する研究室での仕事です。

 石鹸を溶かした水の中に沈んだ直径数ミリの油の粒がガラス基板の上を勝手に動き回ると言う現象で、ガラス基板が縦横に拡がっていると油滴は自発的にランダムに動き回ります。ガラスの端までいくと落ちないで元に戻るので、油滴の幅程度の細長いガラスを作ってやってその上に落とすと、端までいくと落ちずに戻る、と言う往復運動が見られます。またこれを坂道にしてもちゃんとその坂を昇っていきますし、円筒状にしてやるとその内側をするすると昇り、頂点まで行ってもそのまま宙返りして戻ってきます。

 更にガラス板を重ねて階段を作ってやると、油滴はプルプル震えながら昇っていき、端まで行ったらまた下りてきます。つまりこの系は単純な化学物質の組み合わせであるにも関わらず、まるで生き物のような規則的な「行動」をするのです。

 ではなぜそんなことが起きるのか。それには、物質の流れと表面張力が関係しています。上述のように水の中には石鹸(界面活性剤)が含まれ、油滴の中にはヨウ素が含まれているのですが、これらは反応して別の物質に変わります。つまり油滴は界面活性剤を「食べ」て、「身体の中で消化」することができるのです。その「食べる」部分、すなわち油滴の口にあたるのが、ガラス基板と油滴、水が接する部分です。油滴がブラウン運動でゆらゆらしてある方向に動くと、動いた先のガラスの上には界面活性剤があるけれども、動いた後には残っていない、と言う状態になります。すると油滴の表面張力が変化して「前」に引く力と「後ろ」に引く力のバランスが変わります。前への力が後ろへの力に打ち勝って、そのままどんどん動いていく、と言うわけです。

 この油滴が自発的に動く、と言う現象は実は以前から知られているらしく、それどころかこの系以外にもいろいろとあるのです。例えば水の上にショウノウを浮かべると勝手に動き回るし、ある種のアルコールを浮かべても同じような現象が見られます。これらはどれも基本的には何らかの化学反応が起きて物質表面に加わる力を変化させ、物質同士がお互いに引っ張り合っている力を変えて駆動力に変換している、と言う現象です。ニュースではうちの研究室が「発見した」と書いてありますが、正確に言えば現象を発見したというよりも、その現象がなぜ起きているのかを明らかにし、境界条件を工夫することで規則正しい運動を取り出した、と言うべきかもしれません。ランダムに動くと言う現象のメカニズムを解き明かし、運動状態を制御できた、と言うところが新しいのです。

 この現象が、生命とどれだけ近く、あるいは遠いものなのか。例えば「物質を取り込んでエネルギーに変換し、それを元に自ら運動している」のが生命の本質だとすれば、ある意味これも生物だ、と言っても良いのかもしれません。しかし「自己複製して機能を維持する」ことを本質だと考えれば、この油滴は明らかに無生物です。人類が追い求める、生命とは何か、と言う根源的な問い。その理解から、我々はまだまだ遠いところにあるのですが、これはその一歩である、と私は思います。しかしそれ以上にこの研究の一番の意義は、「規則正しい動きをするからと言って、そこに超自然を持ち込む必要はありませんよ」と言うことの一つの例になりうる、と言うことなのかも知れません。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005/03/04

マイケル・ジャクソンの裁判

マイケル・ジャクソン、と言うと学生時代に聞いたアルバム「スリラー」を思い出します。1年先輩のTさんは音楽には全く興味が無さそうな人だったのですが、ある時たまたま下宿の隣の人からステレオをもらいました。当時のステレオ、と言えばレコードプレーヤーが付いているのが定番。レコードなんて一枚も持っていなかったTさんは、これはレコードというものを聞かねばなるまい、と思って早速生協のレコードコーナーに行きました。そこで目に付いたのが、ディスプレイされていたマイケル・ジャクソンの「スリラー」。帯には「今世紀最高の一枚」とか書いてあったそうで、それを見たTさんはとても素直に「今世紀最高ということは、あと20年はレコードを買わなくても良いということだな」と納得してこれを買ったのでした。

 幸いこの一枚はTさんの心を捉えたようで、後輩の私をはじめ友人は軒並み「この今世紀最高の一枚を聞きなさい」と強制されました。そんなわけで、それ以降私にとってはマイケル・ジャクソン=Tさん。見た目は似ても似つかないのに、記憶というのは妙なものです。

 と言うわけで?テレビで久々に動いているマイケル・ジャクソンを見たのですが、何であんな肌の色になっちゃったんですか?あれじゃまるで、白人じゃないですか。僕の記憶の中の(つまり「スリラー」のジャケットの)マイケル・ジャクソンはココア色の肌だったはずなのに。整形を繰り返した、とは聞いていましたが、まさかあれほどとは... 少年犯罪があったかどうかはどうでもいいのですが、あの肌の色はちょっとばかり気持ち悪いです。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

« 2005年2月 | トップページ | 2005年4月 »