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2004/10/20

不思議な無重力

 「京都のラーメン」のネタはまだまだ沢山あるのですが、なかなか取材(と言ってもラーメン食べて写真を撮ってくるだけですけど ^_^;)に行くヒマがないのでちょっとお休み。今日はISS(国際宇宙ステーション)における不思議な理科実験の話です。一昨日訳あってJAXA(宇宙航空研究開発機構)に行って話を聞く機会があったのですが、そこで見たビデオは我々専門家にとっても非常にインパクトのあるものでした。

 ISSと言うのは世界15カ国が共同で運営している宇宙ステーションで、常時3人の宇宙飛行士が滞在して様々な実験を行っています。その研究テーマのほとんどは公募によって決められたもので、滞在する宇宙飛行士はそのテーマにそって実験するわけですが、その中で1人の宇宙飛行士(Science Officer)のDon Pettit博士は、休みの日に身近な材料を使って基礎的な実験をしてそれをビデオに収めました。"Saturday Morning Science"と名付けられたそれは一部をNASAのホームページで見る事ができ、またごく最近来日して高校生を相手に講演したらしいのですが、インパクトがあった、と言うのはその無重力実験のビデオなのです。

 まず最初に登場したのは、上記のNASAのホームページの中のJan. 25, 2003(2003年1月25日)のものです。飲料水をビニールの袋に入れ、その水の中に針金で作った輪を入れて引っ張り出すと、その輪の中に水の膜が張ります。ただ張るだけなら分からないでもないのですが、不思議なのはその強さ。少々振り回したぐらいでは壊れないし、壊れてもその一部が水滴となって飛び出すだけで残った水は相変わらず膜のままで輪の中に残っています。ここにものを差し入れても何も変化はないし、熱いはんだごてを突っ込んでもそのまわりが気化するだけ。その上この膜に染料を落としても放っておいたらほとんど拡散することなくそのままで、注射針を使ってグルグル回してやるとそのまま渦巻き状の模様が出来ます。どれも地上では出来ない実験ばかりで、理屈は考えられないことはないものの、無重力だとこんなことになるなんて想像もしませんでした。

 もう一つインパクトが強かったのは、まず水の大きな球を作ってその中に空気の部屋を作り、その中に小さな水滴(水球)を入れる実験です。中の空気の球の外側はただの水なので、その中の水球はすぐに吸収されるかと思えばさにあらず。内側の面に当たるとぼよん、と跳ね返って何度も何度も飛び跳ねるのです。しかし永遠にそのままかと言うとそうでもなくて、そのうち何かのタイミングで一部が吸収され、小さくなった水球がまた内部の空間を跳ね回る、と言う現象が見られます。なぜ、水球が吸収されずに跳ね返るのか。どう言う時に吸収されて、どのぐらいが残ってまた内部を跳ね回るのか。私と一緒に見ていたのはこう言うのに強いはずの科学者ばかりだったのですが、この疑問に即答できる人は誰も居ませんでした。

 我々科学を研究する者は、常に頭を柔らかくしていよう、と努力しているつもりなのですが、しかしこう言うのを見るといかに「常識」にとらわれているか、と言うことが良く分かります。我々普通の人間にとって、重力があるのは当たり前。どんなことでもそれを前提にして考えているわけで、宇宙空間ではその考えが通用しないのもまた、当然なのだと思います。我々の世代は宇宙での実験がまだまだ特殊な時代に生きているわけですが、もしかすると将来的にはそう言うのが普通になって、「無重力の発想」が自然に出来る世代が生まれるかも。そうなればきっと何か新しいサイエンスのブレークスルーが生まれるに違いありません。

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コメント

面白すぎ!!!
そのビデオ見てみたいな。

投稿: aran | 2004/10/23 16:24

そのビデオですが、教育用で使います、と言えばJAXAから借りれるみたいです。

投稿: せと☆ひでき | 2004/10/27 09:34

宇宙航空研究開発機構ですね。どうもです。

さて、今日、テレビで米村でんじろうさんの実験をやってたのですが、その中で上のことに類似(かな?)の実験が。

シャボン玉を飛ばして、こすって帯電させた風船で下からシャボン玉を反発させ、落ちない様に空中で止めておく。

そうするとあら不思議。シャボン玉が割れるのですが、パチンといかずに、少しずつ口を広げ、壷のような形になったかと思えば、さらに広がって灰皿のような形になり、最後には平面になって、中程に穴があいたりしました。

驚き!!!

シャボン玉は普通、暫くすると落ちてしまって最後までその姿を見とどけられないわけですが、最後まで見てあげるとそういう形をとるとのこと。人工的に無重力状態を作ってやってみれたわけですね。うーむ面白い。

投稿: aran | 2004/10/31 03:33

そのシャボン玉のような挙動は、細胞膜を作っている材料である「リン脂質」でも見れます。リン脂質と言うのは卵の黄身にもふんだんに入っている棒状の分子で、水に馴染まない部分(疎水基)を内側にした「二重層膜」を作ります。その単層の二重層膜でμmスケールの小胞(サイズが違うだけでシャボン玉と同じものです!)を作って水中に浮かべたものを作る事ができてこれを「モデル細胞」にしたりするのですが、条件によってカップ状になったり平板状になったり、と言う様子を見る事ができます。水中では重力の影響を小さくできるので、似たような現象が見れるのかも知れません。

投稿: せと☆ひでき | 2004/10/31 22:29

なるほど。ずいぶん小さい世界でもおこるのですね。

投稿: aranxp | 2004/11/08 01:26

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