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2004/03/02

鳥インフルエンザなんてこわくない〜越南河内紀行(1)

ベトナム、特に都市部を訪れた外国人なら誰でも思うのは、そして実際に私が思ったのは、「道路の凄さ」でした。無数のバイクが流れを作り、自転車がそれに加わり、これらをかき分けるようにして自動車が進みます。追い抜き、割り込み、車線オーバー、逆行。その上1台に3人どころか4人乗っている場合もあり、日本であれば即座に交通違反で捕まりそうな事ばかり。他人が運転するクルマに乗せてもらうだけでも強い緊張を強いられます。中国を流れてきた紅河はハノイを貫いて流れて海に注ぎ込む(だからハ=河、ノイ=〜の中と言う名前が付けられ、実際に中国語によるハノイの表記は「河内」です)のですが、その悠々とした流れよりもむしろ芭蕉の「五月雨を集めてはやし最上川」と言う句がふさわしい感じで、発展しつつあるベトナムの活気を写し込んだような激流です。ベトナムはバイクが多い、と知識では知っていたのですが、ここまで凄いとははっきり言って想像の埒外でした。

この中で歩行者は明らかに少数派。ベトナムには「歩行者優先」の思想はないらしく、人がいようがどうしようが気にせず(もちろん、ぶつからないように気をつけてはいるのですが)バイクもクルマも走って行きます。人はこの流れに飲み込まれないようにして道を渡るわけで、慣れない歩行者には至難の業。私のようなベトナム初心者は、たまに来るクルマとバイクの切れ目を待って渡るのが精一杯で、それもまさに命懸け、と言う感じでした。

ものの本によると既にベトナム戦争中から、安く(クルマに比べて)、場所を取らず、なおかつ家族や荷物を運ぶことの出来るバイクは貴重な輸送手段として広く使われていたそうです。かつては古いスーパーカブが重宝されて(だからバイクのことを一般に「ホンダ」と呼んでいたらしい)いましたが、今やスズキもヤマハも結構たくさん走っています。そして古いバイクだけでなくスタイリッシュなスクータータイプも目にします。そのためこれも貴重な移動の手段だったシクロ(自転車の前に座席を付けたような乗り物)は、すっかり観光客向けになってしまったそうです。しかしその一方で、今やクルマの時代に向かいつつあるとのこと。4、5年前にはほとんど目にすることの無かった自動車の台数が増えて(実際、年式が4年以内らしい新しいクルマが非常に多かった)来ているそうです。ベトナムはまさに今、モータリゼーションの中にある、と言って良いように思います。

ところがこんな状態でも案外交通事故は少ないそうで、実際に私は1週間のうちに一度も事故を目にしませんでした。日本でも免許を取るときは「防衛運転に務めよ」と教えられる(つまりいつでも最悪の事態を想定して運転しろ、と言うことでしょう)わけですが、ベトナムの人々は最初からそれが出来ている様子。側道からバイクが出てこようが前から別のバイクが逆行してこようが慌てない、と言うわけです。私は滞在の最後の日に現地で知り合ったベトナム人のバイクの後ろに乗せてもらっていろいろ走ってみたのですが、確かに見た目ほど危ないと言う感じではありませんでした。

ベトナムはソ連や中国などと同じ社会主義国です。しかし開放政策「ドイモイ」のおかげか、規則でがんじがらめしている国ではないようです。そんな中で国民は、人と人との繋がり、あるいは信頼関係をベースにして、うまく折り合いを付けながら生活しているように見えました。ベトナムの首都の喧噪の中で、「鳥インフルエンザよりも道を渡る方が怖いな」と思いながら、私はそういう事を考えていました。

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